
THE CHANGING SNEAKER INDUSTRY
TEXT by Koji UEDA (Alternate Sneakers)
変異型コロナウイルスが複数現れ、厄介なことに初期のものと比べて感染力も重症化率も高いといわれています。
東京、大阪、京都、兵庫に3度目の緊急事態宣言が出され、より厳しい自粛要請となり経済への打撃は更に大きくなるばかりです。
一方で昨年春の緊急事態宣言時の様に人の流れを止めることができるのか?と疑問視され、更には5月11日までと定められた解除期限が延長されるのでは?という懸念も否めず混沌とした事態は今後も続くのは間違いありません。

地域差はあるものの小売を行う実店舗への来客数のピークは1日に3度あると聞きます。ですが飲食店が19時や20時で閉まることで人は早く帰路につく為、小売店への来客ピークが1日2度に減るというのです。これはスニーカーショップも例外ではなく、消費に多大な打撃を与えます。
実店舗での売り上げ減をネット通販で補い、なんとか乗り切っているスニーカーショップは少なくありません。ユーザーも外出せずにスマホで簡単に商品を買える。ショップ側も接客せずに商品が売れる。コロナ禍においてこれ以上有効な手段はないといっても過言ではありません。

同時にメーカーによるD2C(Direct to Consumer)が加速度を増しています。このことは約2年ほど前から私の様な1ユーザーの耳にも届いていました。利益率の向上や費用対効果などを考慮するとD2Cへの移行は至極自然な流れであり、それを止めることは出来ないのだと思います。更にD2Cにより各商品の低価格化が実現するならば私達ユーザーにとっても歓迎すべきところではありますが、今のところそれは皆無に等しいのが現実です。
スニーカー業界の仕組みが大きく変わり、これまでのパワーバランスが大きく崩れメーカーが絶対的な存在になることで私達ユーザーにどんな利益と不利益をもたらすのか?
D2Cは一見、ユーザーにとって良いことしかないのでは?と思いがちですが本当にそうなのか?と疑問を持つこともスニーカーと長く付き合っていく為に必要なのではないか?と思うのです。



ちょっと考えてみてください。
需要と供給のバランスを意図的に操作し、足数を制限して買いたくても買えない、早朝から並んだり、販売開始時間にアプリにかじりつき抽選に当選しなければ買えない。やっとの思いで手に入れた商品に不備があっても交換さえ叶わない。私達ユーザーの立場はなんと弱いことか。
買えるか?買えないか?当選するか?落選するか?のせめぎ合いはギャンブル性があってイベントととしては確かに楽しめるのですが、それにも限度というものがあります。
数を制限することでブランディングを構築する手法は間違いではないと認めると同時に、商品力のみで勝負に勝てないのであれば、そんなブランディングはとっとと壊れてしまえばいいと思う側面も私の中にはあります。
私達は日々発売されるスニーカーをどうやったら買えるのか!だけではなく、スニーカー業界内の変化によって私達が本当に不利益を被らないのか?を注視することもスニーカーヘッズの資質のひとつなのでは?と思います。「木を見て森を見ず」にならない様に心がけ、もう少し、ほんの少しでいいのでユーザー主導のスニーカー市場を取り戻したいと思いませんか?

余談になってしまいますが、メーカー主導のD2Cは実店舗よりもネット通販の比重が大きいの周知の通りです。
取るに足らない私個人の話になりますが、2017年3月から始めたInstagramのアカウント(@alternate_sneakers)が2020年11月8日の早朝に何の前触れもなく突如停止となり一万数千のフォロワーさんを一瞬にして失いました。規約違反にあたる様な使い方をした覚えはなく、何らかの警告もなしにです。
直ぐ様、もし知らず知らず規約違反をしていたのなら改める旨を記しInstagramを運営するFacebookにアカウント再開の異議申し立てのメールを送信しました。そして返信が来たのは1ヶ月後でその文面をキャプチャしたのが下の画像です。

文面は
「アカウントが誤って無効にされたようです。 アカウントが再開され、ログインできるようになりました。ご不便をおかけして申し訳ありません」
という内容だと思います。
謝って無効にされた?でも、再開できるのであればと思ったのですが、結果を申し上げるとログインできる様にはなっておらず、そのことを再度メールしたにもかかわらず、5ヶ月近く経った今もFacebookからは何の音沙汰もないままです。
無料で使わせてもらってるものなのでこういうこともあるのでしょうが、それまでフォローしてくださっていた方々の中には、私にブロックされたと誤解され気分を害される人がいないとも限らないのです。
フォロワー数は新たにアカウント(@alternate.sneakers)を作りまた1からこつこつ更新を重ねれば少しずつ増えていくものだと思いますが、こちらが意図しないところでフォローしてくださっていた方々の気分を悪くしてしまったとしたら、それはとても申し訳なくやるせない気持ちになると同時に、Instagram等のSNS運営会社のサービスに多くを期待するのは危ういと確信しました。
因みに4月上旬、Facebookから利用者5億3300万人分の個人情報(電話番号やFBのID、氏名、所在地、生年月日、自己紹介、一部の電子メールアドレス)が流出した可能性があると報じられました。Facebookはこれは2019年に発覚していた問題ですでに対処済みだとし、流出した個人情報も古いデータだと回答しただけで…流出後の詐欺などに悪用されるおそれについては責任はないというスタンスの様です。

以上は些細な私個人の身の上に起こったことですが、SNSをはじめとするネット上の仮想空間は予期せず一瞬で消えてしまうというリスクを孕んでいるひとつの事例でもあります。
D2Cが加速した未来、もし何らかの原因によって世界的にネット回線が長期間不通になることだってあり得なくはないのです。
1年半前、新型コロナウイルスが現れ世界が大混乱に陥るということが現実社会に起こったのと同様に、仮想空間にも予測がつかない事態がいつ何時起こっても不思議ではないということを踏まえた上でD2Cを進めないと取り返しがつかなくなるということです。

随分前のことです。
下積み期間が長かったあるアーティストさんと仕事をした時のことす。
その人はヒット曲に恵まれて、既に大ホールも連日満員に出来る大御所と呼ばれる存在になっていたのに、何故こんな小規模なインストアイベントの仕事を請けてくれたんですか?と尋ねたところ、大ホールもインストアイベントも両方出来るのにやらないと損じゃないですかと笑顔で答えてくださいました。その笑顔には天国も地獄も見た人の凄みが感じられた。
image courtesy by あきとくんちゃんねる
