
atmos Local Educationの役割
TEXT by Koji UEDA ( Alternate Sneakers )
今年も12月に入ったなぁと思いつつ、うかうかしていたら間もなく年の瀬…気がつけば年を越していたなんて事が現実味を帯びて来ました。
実際には終息したわけではないコロナウイルスも2類から5類に引き下げられ、あらゆる制限がなくなった状態での年末は4年ぶりの事。気兼ねなく忘年会や新年会を行える様になり、繁華街はそれなりの賑わいを見せています。
とは言っても酒類を嗜まない私にとって殆ど無縁の話ですが…。
◼atmos Local Education”adidas Originals OG SESSION” 金沢
12月8日に金沢でatmos Local Education”adidas Originals OG SESSION”が開催されるのを知ったのは6日前の深夜。
そういえば、2021年12月にもatmosさん主催のadidas会が金沢であった事。そして、そこに居るはずのない者が現れる事によって驚く表情が見たいという、ただそれだけの理由で金沢に向かった事を思い出した私は…再び同じ事を企み、数分後にはスマホ片手に列車とホテルの予約を済ませたのは言うまでもありません。
イベント当日の朝、トークセッションに登場される小島さんやmita sneakersの国井さんはもちろん、atmosのスタッフさんにも黙って1人金沢に向かいました。

金沢に到着後、イベントが始まるまで時間があったので竪町にあるセレクトショップiMARTさんとスケートボードショップCASPERさんへ。元HECTICのスタッフさんだったiMARTのオーナーさんとNIKE SBの正規店でもあるCASPERのオーナーさんは、どちらも20年以上前からのお付き合い。とは言っても、数年に一度しか訪れない私を覚えていていただけるのは有り難い限りです。

それにしても平日(金曜日)の昼下がりといえ、人が少ない竪町。かつてはSTUSSY、HECTIC、A BATHING APEなど裏原を代表するストアが並び…セレクトでSupremeを扱う店やLevi’sストア、ナイキショップだったS.P.Cが軒を連ね、さながら北陸の裏原宿といった佇まいで賑わいを見せていた場所です。それが、2006年11月にJR金沢駅前に金沢フォーラスがオープンした頃を境に人の流れが変わり始め…。
現在は閑散としていますが、人気ブランドやそれこそadidasやNIKEの直営店を誘致すれば少しずつ賑わいが戻る足掛かりになるんじゃないのかな?と思うのが。またあの頃の、華やいだ光景を見てみたいです。


さて、atmos Local Education”adidas Originals OG SESSION”に話を戻します。
イベントが始まって20分くらい経った頃に会場に到着。私の姿が視界に入ったトークセッション中の小島さんと國井さんの表情が一緒「おや?」といった感じに変わったの確認した時点で私の目的は完遂(笑)。
本当はそのまま立ち去れば「いったい上田は何しに来たんだ⁈」となって面白かったのかもしませんが…お2人に直にお会いするのは昨年発売されたムック本「SNEAKERS CULTURE ARCHIVES」での対談していただいた以来だったので、ご挨拶と少しお話しをさせていただきました。
イベントの詳細については、こちらをご覧になってみてください。



私はリセール品が並び、宛ら品評会の様相を呈するお祭り的なスニーカーイベントがとても苦手なので、これまでもこれからも関わる事はありませんが…atmos Local Educationの「atmosが中心となりスニーカー、アート、ファッションなど様々なカルチャーにフォーカスをあて様々な取り組みを行い、そのコミュニティを通してスニーカー好きをはじめ、スニーカーをあまり知らない方など様々な方の架け橋になる場を提供します」というコンセプトには大いに賛同します。
スニーカー人気が一時期に比べて下降線を辿り続ける今こそ、こういった地道な働き掛けが不可欠だと思うからです。
数字だけに囚われ、刈り取る事ばかりを考えていたら市場は枯れ果てる一方です。

ここ数年のリセールによる転売ブームがもし再び訪れたとしても、過去の盛り上がりを超えるのは難しい可能性が高い。理由は一旦終わったブームが再燃しても、過去のそれを上回る事が出来ないのは歴史が物語っているからです。
故に今は数年先を見越し…種をまき、肥料や水を与えるという様々な取り組みを行い、新たなムーブメントを築く為の準備期間でなければならない。そして、リセールとは異なる価値基準でスニーカーを評価出来る次世代ユーザーを育てる必要があります。その役割は、メーカーや大手リテーラー、冬の時代を幾度となく乗り越えて来た老舗ショップのスタッフさん達にしか担えません。
後先を考えず、大損をしろとは言いません。ですが『損して得取れ』という言葉がある様に、将来の大きな利益を得たいのなら…時間をかけてでも取り組むべきです。
幾千の無駄に見える積み重ねの中からしか、真のカルチャーは育まれる事は決してありません。
今後、atmos Local Educationがもしお近くで開催されるなら、是非ご参加される事をお薦めします。きっと新たな視点でスニーカーを感じることが出来る様になるはずです。
