Regain lost corporate culture

TEXT by Koji UEDA ( Alternate Sneakers )

6月27日に開催されたナイキの第4四半期決算の発表が引き金となり同28日に「ナイキの株価が20%下落で時価総額4.4兆円喪失」というニュースをご覧になった方も少なくないと思います。
私もある程度は予想していたものの…それを遥かに超える急落に驚きを隠せませんでした。これを書いている7月7日時点で株価回復の兆しはなく、スポーツ用品店メーカーとして特需であるオリンピックに期待はしつつもどこまで功を奏するか?

私は投資家ではありませんので、あくまでユーザー目線のレベルでしかありませんが…28日の株価チャートを見て「これヤバくないか?」と思ったのです。
とは言っても世界に冠たる大企業です。こんな事で揺らぐ事はありません。それに、こういう記事を見ると数字ばかりが強調され、読み手側もそこに囚われてしまいがちになります。円安の今だから4.4兆円ですが、2年前だと3.1兆円です。それでも途方もない金額には違いありませんから実感が湧かない。

私がヤバくないか?と思ったのは、またレイオフをおっ始めるんじゃないか⁈ということです。
いろんな考え方があるのは敢えて横に置かせていただいて申し上げると「業績が振るわなくても企業にとって財産ともいうべき従業員の整理は最後のそのまた最後の手段であって、それを簡単に行使するのは無能な経営者がすること」というのが私の持論。

昨年12月、品揃えの簡素化と従業員の2%にあたる1600人以上の人員を削減すると発表したナイキ。ここではその人数には触れませんが、日本も例外なくその余波が襲いました。
しかし、実施された2%のレイオフは財政状態の助けには繋がっていないという指標を複数のアナリストが示しています。言い換えれば人員削減は効果がなかったという見方が出来るのです。
この指標を見た辞めなければならなかった方々の心の内を思うと…複雑な気持ちになります。そして、残られた方々も高確率で明日は我が身ではないか?と思われるのではないかと。もし自分がその立場だったら、きっとそう考えるに違いありません。

これまで知り合ったナイキジャパンの方は、正確に数えた事はありませんが…30人以上にはなると思います。その大半の方はナイキから退かれています。
ちょうど20年ほど前でしょうか。退職直後に「今、ニューヨークに来てるんだけどお勧めの良いスニーカーショップはないかな?」とメールが届き…「この前までナイキの社員だった人が僕に聞きます?(笑)」と返した事があります。その方はディズニーに転職されました。
また、mita sneakers×realmad HECTICのMT580が実現する際に担当された当時のニューバランスの部長さんは元ナイキジャパンの方でした。
この他に、過去に退かれた方々も含め、ネクストステージで活躍されているのを見聞きすると素直に嬉しいし、今回対象となった方々の今後のご活躍も心より願っています。

余談になってしまいますが、日本では大企業に分類される企業の取締役から直接こんな話を聞いたことがあります。
「年齢や勤続年数、年俸という数字によってレイオフ対象を選別すると…会社にとって残って欲しい人から順に辞めて行っちゃうんだよね」と。
それは何故か?と問うと
「そういう人は他の所でもやって行けるから」
と…。

ニュースでは新興ブランドがナイキの足元を脅かしているとありますが…私自身は未だそこまでではないと捉えています。但し、他のフットウェアメーカーやハイブランドへ元ナイキの肩書を持つ人が数多く流出しているという事実も一方ではあり、その因果関係を見定める術を私は持ち合わせていませんが、あながち無関係とも言えないのではないでしょうか。

最後に冒頭にも書いた通り、私は投資家ではないので実際のところは分かりませんが…直ぐには好転しないと見ている投資家に対して今最も効果的なアピールは、一般の従業員ではなく経営陣の刷新しかない?とあくまで素人としては思うのであります。

たまに?私がモノ申す様なこと言う理由は…従業員(社員)や小売店を簡単に切らないで欲しい。D2Cによって取引先が小売店からコンシューマーたるエンドユーザーに移行した場合もそれは同じ!という願いが起因になっていることを付け加えておきます。
だって、投資家が喜ぶ業績好転に繋がる消費を作るのはエンドユーザーなのですから。
そして、利益率は下がるでしょうが…D2Cを継続しながらも原点回帰の必要性は低くないのでは?
何れにしても時が必要。その時間の中で何を成すべきか?が重要。
切り捨てという構造改悪のツケは決して安くはない。

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