AIR MAX 96 Ⅱ~不遇であるからこそ愛おしい存在~

TEXT by Koji UEDA (Alternate Sneakers)

その年により、Spring、Late Spring、Spring Summer、Fall、Fall Winter、Holiday等とシーズン名が異なることがありますが、ナイキは1年を4シーズンに分けて商品を市場に投入するのは今も昔も変わりません。
2021年4月に復刻されるAIR MAX 96 llは1997年Spring Summerのカタログにおいてランニングカテゴリーのフラッグシップモデルとして掲載、同年3月(記憶が確かであれば並行品は2月頃から店頭に並んでいた)に正規リリースされたAIR MAXです。
90年代後期までランニングシューズのランニング最上位モデルはAIR MAXという名で統一されていたので、このモデルのボックスラベルにはAIR MAXとだけ表記されていました。
後に95、96と称されるAIR MAXも95年と96年のSpringカタログに掲載され、日本ではそれぞれの年の春にリリースされています。

special thanks:@daijirossi

故に当然、97年の春に登場したこのモデルを誰も疑うことなくAIR MAX 97のファーストカラーであると認識していました。
※96年度のカタログに掲載され発売されたAIR MAXとはアッパーデザインが異なることもその要因でした。

当時、スニーカー情報の主流であったファンション雑誌にも97年型もしくはAIR MAX 97として紹介され、その中にはナイキジャパンが監修したものもあると聞き及んでいます。
そして、1997年Fall Winterカタログに掲載された皆さんがよくご存知の新幹線をモチーフにしてデザインされたというデュアルプレッシャーフルレングスエア搭載のAIR MAXが同年7月にリリースされたことで、雑誌メディアも我々ユーザーも2017年Spring Summerシーズンに発売されたモデルをAIR MAX 97 SS、2017年Fall Winterシーズンに発売されたモデルをAIR MAX 97 FWと区別して呼ぶ様になりました。
それが2016年になってAIR MAX 96 II XXという俗称Ultraエアユニットを搭載したモデルが発売されたことで覆されました。これによりAIR MAXの年式による呼び名に不整合が生じた詳細はatmos media内のコラム Alternate Sneakers +「エアマックスの謎」をご覧ください。

左:2017年3月発売 AIR MAX 96 II (97SS) オリジナル  右:AIR MAX 97 (FW) 2017年発売ヴァージョン

さて、前置きの方が長くなってしまいましたが…2006年よりAIR MAX 95のミッドソールがマイナーチェンジされビジブルエアの形状がそれ以前と変更になったのは広く知られていると思います。

今回、発売されるAIR MAX 96 llもオリジナルから改良?が施され…ビジブルエアのウインドウが美しく整えられ、特にインサイド部分などはとても切れ長(笑)な容姿になっています。

上段:2021年 AIR MAX 96 II  下段:オリジナル(2021年撮影)

これと初対面となる若きスニーカーヘッズの方々には何ら抵抗はないと思います。
ですが、私の様なオールドユーザーにとっては違和感しかありません。オリジナルの個体差だらけの、あの歪なエアウインドウを懐かしく思う…ただそれだけなのですが、目に焼きついたこのアッパーデザインとミッドソールの窓からはみ出る様なビジブルエアを主張した歪な形状とのバランスが絶妙だった!と記憶の奥底に刷り込まれているから仕方ありません。

上段:2021年 AIR MAX 96 II  下段:オリジナル(2021年撮影)

なので、2015年、2018年、2020年のAIR MAX 95 OGイエローグラデも含めて、今回のAIR MAX 96 llも細かなことをいえばオリジナルを忠実に再現していない復刻である!となるわけです。

左:AIR MAX 96 II  右:オリジナルとそのボックス(1997年撮影)

1997年にAIR MAX 96 ll(AIR MAX 97 SS)が発売された時、雑誌にはランニングシューズのスピード感あるデザインに立ち返った…的な紹介をされていました。
確かに当時の既存のランニングシューズに共通したデザイン性だったと思います。ということは、もう少しミッドソールにボリュームがあるとダッドシューズの一員になっていたかも知れないのです。

オリジナルをリアルタイムに体験したオールドファンにとっては…新型エアユニットの開発が遅れたことで前作のエアユニットを継承せざるを得なくなり、アッパーデザインも短命に終わり、モデル名がさえも19年後に変えられた?不遇の存在であり、ハイテクスニーカーブームの残り香を感じられる愛おしい存在なのです。
故に24年の時を経て…Ultraエアユニットではなく95年型の改良マルチチャンバーエアを搭載した今回の発売は忠実さには欠けるものの本当の意味での復刻といえるので、この上なく嬉しい出来事でもあるのです。

最後に製造元のナイキさんがAIR MAX 96 llと称しても、私にとってこのモデルはAIR MAX 97 SSなので個人的にはそう呼び続けることでしょう(笑)。

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