格差と暴論

TEXT by Koji UEDA ( Alternate Sneakers )

■2022年のスニーカーシーンはどうなるのか?何が売れるのか?

さっぱり分かりません(笑)。
メーカーであったり、リテーラーであったり…私が日々スニーカー業界内で仕事をしていて、あらゆる状況を肌で感じデータを手にしているのなら、ある程度精度の高い見通しを立てることは出来るかも知れませんが、そうではないので真摯に答えると「分からない!」となります。

何が売れるのかも事前のリセール価格の動向によって定まってしまう時代です。
元々は発売時にノーマークであったり、前評判はそこそこだったのにも関わらず数週間店頭から姿を消さなかったモデルが…その後ジワジワと探す人が増え、探しても正規店には既になく2次流通品を買うしか術がなくなり、さらにそれが高じてリセール価格が高騰するという図式でした。
そのひとつの例が2001年のAIR FORCE 1 B白蛇です。流石に数週間は売れ残る様なことはなかったですが、1〜2日は店頭に並べられていました。私が最終的に家族用を含めて5足も買えたのは(発売の日時が厳格に指定されていない時代だったからというのもあります)タイミングさえよければ並ぶことなく入手出来たのです。もちろん生活圏の違いによって誤差があるなで違った印象をお持ちの方もいると思いますが…。
当時の経緯を簡単に振り返ると…AIR FORCE 1 B白蛇は数年ぶりにスネーク柄があしらわれていることで発売前から注目されていました。ですが、いざ発売され実物を見ると蛇柄が型押しではなくプリントだったために購入を見送る人が続出。入荷日の違いなどもあり遅れて販売を始めた店舗でも一瞬で売り切れる様なことはありませんでした。
俄に騒がれ始めたのは、最初の発売から3週間ほどだった頃、発売されたファッション誌に掲載されたのがきっかけです。
大物、小物という表現は好きではありませんが…当時は後から化けるモデルが時折出てくるのが面白くもありました。
そして、それらは全国隈なくとまではいかないまでも…比較的広い地域のリテーラーで発売されていたのです。

■格差拡大

2022年のスニーカーシーンを予測することは私には無理ですが、唯一肌で感じつつあることがあります。

それは
東京を含む首都圏と地方との地域格差が更に大きくなるだろうということです。

私はかつて大阪から東京に数年間、転勤していたことがありました。
その際に最も驚いたのは、大阪と同じ頑張りで数倍以上の結果が出せることでした。
初めの頃はたまたま運が良かったからだと思っていたのですが、数ヶ月経ち1年が経とうした頃も変わらず結果を出すことが出来たのです。
そこで気付いたのは、これは私自身の実力ではなくあらゆるものが集中しシステムとして機能している東京という場所の力なのだと。

これをスニーカーシーンにおける地域差と横並びにするのは適切ではないかも知れませんが、ハイプなスニーカーを取扱うスニーカーショップが乱立するというインフラやシステムが整った首都圏とそうではない地方との差は歴然です。
その溝の差は、まだ恵まれている方である大阪に住む私の想像をも遥かに超えるでしょう。
ハイプなスニーカーを扱えるリテーラーがあっても数軒、一軒もそういうスニーカーショップがないエリアの方が圧倒的に多いのです。
それは、正規品を正規店で正規価格で買える買えない以前の問題です。
一例ですが、現状でもNIKE SBの取扱店は首都圏に圧倒的に集中していると思いません?

このことは地方にスニーカー系YouTuberが少ないことからもわかります。
直営店やatmosの様なショップが近隣になければオンラインチャレンジ以外に入手の手立てがありません。鮮度が求められる抽選並びレポートや商品レビューは絵空事に近いのではないかと思います。同時に現場でしか知り得ない活きた情報も乏しく、動画で発信する題材自体が身近にはないのです。
そうなると地方在住者は定価の数倍の金額を投じないとハイプなものを手に入れられません。そのリセール価格と定価との差額があれば他のスニーカーを更に1〜2足は多く買えるはずなのに。もちろん、首都圏在住の方々も欲しいものが買えない環境にあるのは確かですし、リセール品に頼らざるを得ないことも多々あることは痛いほど認識しています。
でも、地方在住者には正規価格で買えるチャンスは限りなく確率の低いオンラインだけ。端から定価購入を諦めてリセール品に直行する人も少なくないのではないかと。
故に地方に住むスニーカー系YouTuberの方々は企画力と編集の才能で勝負するしかなく、並大抵の努力と労力ではクオリティを維持継続させることは難しい。だからこそ頑張って欲しいと私は思うのです。
ここで引き合いに出すのはご本人から叱られるかもですが、チャンネル登録者数と動画再生数の比率やライブ配信時の視聴者数を見ても「髭ミルク」さんがその成功例のひとつだと思っています。

■暴論?

ならば!
ここからは暴論です。

ナイキ1強と言われる今日の日本のスニーカー市場であるならば、他のスポーツメーカーブランドはナイキが重きを置いていない地方をフォーカスし、地方から中央に向けてボトムアップする戦略を立てるのも一考かと思います。
最早、ナイキと同じことをしても勝てる見込みは薄いですから。

例えば、東京限定があるならば非東京限定モデルがあってもいいはずです。
各々の地域にちなんだものである必要はありません。かつでナイキが行ったご当地DUNKやナイキ大阪限定のAIR FORCE 1 白黒蛇は極所的な単発企画でしたが、私の言う非東京限定は首都圏以外のリテーラーで適度な間隔をあけて企画を継続させる長中期プランとして展開するプロジェクトです。
しかも、誰が見てもクールなプロダクトを例えば北海道限定や九州限定で。それが無理なら首都圏以外での全国展開。それくらい極端なことをやらないと面白くないし、面白くないと化けるものも化ません。

現実的には費用対効果などを考慮すると成し得たくても成し得ない数多の障害が立ち塞がることは百も承知しています。ですが、それらを突破した先にしか活路が見出せないのはメーカーの方々は理解されているはずです。理解していても身動き出来ない大人の事情もあるでしょう。でも、本当にそれでいいんですか?このままで構わないのですか?

効果が出るまでには時間を要するでしょうが、この暴論を超える様な挑戦の先にしか現状を変える方法はないのではないかと…。
ナイキ以外のスポーツメーカーブランドに新たな日本のスニーカーカルチャーを作って欲しいと期待しています。

地方在住者には東京への憧れ、羨望があります。私自身も先にも書いた通り東京に転勤し、首都圏に住んでいたので東京や神奈川、埼玉は今尚馴染み深い場所です。
同時に東京フォーカスには少しばかり飽きています。東京限定発売やメーカーが実施する東京だけで開催されるイベントがあっても…あ!またそうなのね!という風に驚きも感動も殆どありません。

Related Article List