
100th

◼コロナとスニーカーブーム
2020年3月に連載のお話をいただき、同年6月に始まったatmosさんでのコラムが今回で100回目となります。
その第1回目のタイトルは
「次なる新しい世界でスニーカー市場がどうなるのか?」
でした。
第1回のコラムは…
「パンデミックはいつか必ず終息します。街に人が溢れ、毎週末には店頭抽選販売が実施され、長い行列を成し、買えた買えなかったで一喜一憂する。スニーカーファンもスニーカーショップも以前にも増して元気で活気のある日常が1日も早く世界中に戻って来る事を切に願います」
という一文で締めくくっています。
ここに言う「次なる新しい世界」とはコロナ禍が明けた後の世界の事です。
終息ではないものの感染症の分類が2類相当から5類に移行された2023年5月からマスクの着用も自主判断に委ねられ、一応の区切りを迎えたという事で「次なる新しい世界」になったと捉えていいでしょう。

結論を先に申し上げると
「次なる新しい世界が始まったと同時にスニーカーブームもひとつの区切りを迎えた」という事になるのだと思います。
街には人が溢れてはいますが、毎週末には店頭抽はなく…先着通常販売でも並びがない日が多い。
断続的に繰り返された緊急事態宣言をはじめとする感染症対策によって多方面に及んだ経済への打撃。スニーカー市場も例外ではなく実店舗の売上げは半減するも、幸いにもオンラインが反比例して好調となりこの3年間を乗り切る一翼を担いました。
加えてコロナ禍前から計画されていたNIKEをはじめとするメーカーによるD2Cが奇しくも功を奏する結果になりました。
ですが3年という時間の経過による変化は避けられず、予想以上にコストのかかるD2Cにも陰りが見え…皮肉にもスニーカー人気が下降線を辿り始めたタイミングとシンクロしてしまったというのが「次なる新しい世界でのスニーカー市場」となってしまいました。

昨年までは店頭から瞬く間に姿を消していたであろうプロダクトが軒並み残り…更にはアウトレットで半額以下になったという情報がSNSで目立つ様になりました。ですが、この状況が谷の底なのかというとそうでない可能性があります。というのも、かつてのスニーカー冬の時代とは未だ未だこんなものではなかったのです。
SNSでアウトレット情報が溢れている間は大丈夫だと私は思っています。但しアウトレットの価格さえ安いと感じなくなり、それが常態化した時がこの数年間の盛り上が本当の意味で終わる瞬間かと思います。
抽選対象になったり発売後即日完売になる様なスニーカーが少なくなっただけで、スニーカー業界全体でいえば…決して悪くはありません。
以前にも何度か書きましたが…郊外の量販店で販売されているスニーカーヘッズが興味を示さない1万円前後の価格帯の商品が日本のスニーカー市場を支えています。
いわゆるブームを司るスニーカーヘッズが追いかける様な商品は、全体の一部であるという事を見落とさない様にしたいものです。
◼August 2023
スニーカーヘッズが追い求めたであろうスニーカーの話に戻します。
注目度が高かった8月下旬の6足を合計すると139,700円になります。
これが1ヶ月に2足ずつのリリースなら買えずとも全部狙う人は多いのではと…。しかし、僅か5日の間に集中しているので9月に発売されるSupreme×NIKE SB DUNKやその他のモデルの事を考えると取捨選択を迫られるというのが実情。大半のユーザーの懐は私を含めて無限ではありません。
数珠繋ぎリリースによって拾う(狙う)ものが減り、捨てる(狙わない)ものが増える。その行き着く先に待っているのは…何ひとつ買わなくなるという未来か?

長きに渡る絶え間のない発売ラッシュはスニーカーヘッズ達の疲弊を招き、限定やコラボレーションへの馴れが飽きに変化。そこに過去のスニーカー人気下降時期にはなかった値上げがダメ押しになる。
更に買って定価以上で転売するという逃げ道も閉ざされつつある今、数多いるスニーカーヘッズ達の何割が残るのか?
コラボやイベント、記念日等で単発的な盛り上がりは今後も期待出来るとは思うものの…それが他に飛び火する確率はこれまでに比べて低いだろうと想定されます。
更に価格上昇は現在の動向を鈍らせるに止まらず、将来の主たるターゲットとなる世代の新規参入をも妨げ兼ねないのです。
ネガティブな事ばかり並べててしまいましたか、ブームや流行には浮き沈みがあるのは必然。故にスニーカー人気はいつか必ず新たに始まります。大事なのはその復活までの期間に何を考えどう過ごすのか!なのです。
生活必需品として消費されるスニーカー(シューズ)はブーム云々に関わりなく売れているので…スニーカーが終わったと言い放つ時は「ハイプ化する様な…」という注釈を付けた方がいいと思います。YouTubeやInstagram、X(旧Twitter)で声高らかに「ブームが終わった」と何もかもが売れなくなったかの様に連呼するのは、スニーカー全体を貶める風評被害になり兼ねないので熟慮が必要だと思います。
「目に見えるものが真実とは限らない。何が本当で何が偽りか」
それを見極める様に心がけ、第三者に左右されず自らの感性に従ってスニーカーを選んで行きましょう。
もし、私に見習っていただける何かがあるとすれば…それくらいしかありません(苦笑)。
冒頭でも申し上げた通り、今回で連載100回となりました。
「だから何?」と自分でも思うわけですが、よくもまあ100回も書く事があったなぁと(笑)。そして、時々(←自分ではそう思っているw)毒付くにも関わらず、時には苦々しく思いつつも懲りずに掲載を続けて下さっているatmosさんと拙い文章をお読みいただいている皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございます。
引き続き、何卒宜しくお願いいたします。
