本明秀文という人

TEXT by Koji UEDA ( Alternate Sneakers )

本明さんがatmosを去った。

「退社の理由」については本明さんと共に『SHOE LIFE 「400億円」のスニーカーショップを作った男』を上梓した小池さんが書かれたWWD JAPAN Digital(https://www.wwdjapan.com/)の記事をご一読いただければと思います。

正規リテールである事を続ける為にチャプターの看板をおろした時も、会社を売却してテクストトレーディングカンパニーの名がなくなった日も悲しく寂しい思いをされたのは想像に難くありません。そして我が子同然のatmosと苦楽を共にした家族同様のスタッフさん達との別れは言葉では尽くせないものがあったに違いありません。
メディアでは400億円とか原宿ドリーム等と成功例ばかり取り沙汰されますが…今日までの道程は決して平坦なものではなかった事は余程の阿呆でなければ推測できるはず。

過去20数年の間、その時々に本明さんが冗談混じりに私に話してくれた事、第三者から耳に入って来た話や噂。本明さん達が直面した数々の苦難は、直接影響のない私の様な立場であっても…耐え難い内容のものばかり。それを乗り越えての今日である事を振り返れば、ライブ配信での言葉を詰まらせながらの姿は…私にとっても重く、そして納得の姿でした。
人によっては見方も異なり、揶揄する様な意見があって構わないと思います。でも、同じ時代に同じ条件を与えてやるから本明さん以上の結果を出せるのか?と問われると、少なくとも私には到底無理な話。私でなくても、やれるものならやってみろ!と。

契約による制限がなくなる4年後に再びスニーカー業界に帰って来るのかは正直なところ私には分かりません。「ぼんこ」を世界に広める為に奔走し、スニーカーどころではないかも知れないし、また新たなビジネスを始めているかも知れない。

本明さんに湿っぽい姿や話は似合わない。儲け話があれば途端にジャキーンという擬音が聞こえて来そうな勢いで目が¥マークとなり、次の瞬間には行動に移している。それが私が見て来た本明秀文という人の姿。

そして残され後を託された阿久津さんや小坂さん、小島さんをはじめとするスタッフの皆さんは「本明さんがいなくなったらatmosが駄目になった」と言われない様に、これまで以上に粉骨砕身で挑むに違いない。

もしアメリカのフットロッカーに伝わるなら、一見無駄に見える様なものの中からしかスニーカーカルチャーは芽吹かず育まれないのだと。日本のスニーカーカルチャーを駄目にしないでくれと。

何だか重苦しい内容になったので、最後にひとつ。
atmosの店頭抽選にドレスコードを履いた本明さんが並んでいたら面白いだろうなぁ(笑)。

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