ポケモンカードとスニーカーシーンの今

TEXT by Koji UEDA ( Alternate Sneakers )


スニーカーからポケモンカードへ

ポケットモンスター(※以下ポケモン)はもちろんポケットモンスターカードゲーム(以下ポケモンカード)の事を私は殆ど何も知りません。ポケモンとデジモン(デジタルモンスター)の区別さえ出来ません。
ですが、ネットやテレビのニュースを通じて発売の度に取扱い店前に徹夜の大行列が出来たり、各コンビニでは指定された販売開始時間が近付くと店内をうろうろする人がやたらに増えるという現象がある事くらいは把握しています。

というわけで、ポケモンカードについて造詣が浅い私の個人的見解が含まれているのを大前提とし、以下をご覧いただけると幸いです。

ポケモンカードのカテゴリーを階層化して分類すると、パッケージやBOXにおける封入率によって『通常レアリティ』『特殊レアリティ』という親カテゴリーがあり、それぞれに複数の子カテゴリーが存在するそうです。スニーカーに置き換えると幾つかにセグメントされたショップ毎に入荷するモデルが異なるのに近いのかな?と思います。
また、公式イベントやコラボレーション(タイアップ)による限定版や非売品を指す『プロモカード』という親カテゴリーがあるとの事。これはTravisやブランドコラボレーションモデルに当て嵌まるかも知れません。

そして、そのレア度の高さによってリセールマーケットで1枚のカードが数10万円から100万円を超える価格で売買される事があるそうです。

知識がなく価値観の違う私には、いくらでも複製出来る紙の印刷物に?と思ってしまいますが…スニーカーに興味を抱かない方々にとって2万円超えの、しかも似たようなシューズを何足も買うという行為は正気の沙汰ではないのと同じですよね。

前回のコラムでも少し触れましたが…7月28日発売のAIR JORDAN 1 RETRO LOW OG “Black Toe” の店頭抽選に並んだ人が思ったより少なかったのは、SNKRSでの当選者が比較的多かったせいもあるでしょうが、転売目的でスニーカーを購入していた人が同じ日に発売されたポケモンカードゲーム拡張パック「黒炎の支配者」に流れたという見方もなくはないかなと…。

※誤解されない様に補足すると…元々、スニーカーもポケモンカードゲームも好きで純粋にコレクションし続けている人は例外です。

というのも、普段から来店している顧客ではない在日外国人の方が、なんと家族連れでポケモンカード目当てにコンビニを巡り歩いていたという話を知り合いから聞きました。
確実にそうだとは言い切れませんが…もしかするとその外国人のご家族は、少し前にはスニーカーの店頭抽選に並んでいたのかも知れないと。
日本人も含む購入即転売を目的にした人達がスニーカーからカードに鞍替えし、トレカヘッズとか自称してたりしたら…なんか嫌だなぁ(苦笑)。

因みに全く違う話ですが…ポケットモンスターカードゲームが初登場したのは1996年なんだそうです。
AIR MAX 95等が注目された時のスニーカーブームやG-SHOCKブームもほぼ同じ時期の事なので…90年代半ばって、振り返ると凄い時代だったのかも知れません。

「ポケカに350人行列 乱闘騒ぎ」という見出しの報道を見ると…小学生のお子さん達に行き届いているのだろうか?と思う事があります。
子供達がポケモンカードでゲームに興じ、レア度の高いカードを手に入れたら友達同士で自慢し合う…そういう光景は微笑ましく思えます。一方で、今時の小学生達はもしかすると「これは◯◯万円のプレ値が付いてる」とか「◯◯万円で売れるんだぜ」等と話し合ってたりしたら。末恐ろしいというか…そんな子供はなんか嫌だなぁ(苦笑)。

スニーカーシーンの今

スニーカーに限らず、人気には必ず浮き沈みという波があります。今はその波の下り途中。
それは既に2021年に入って間もなく始まっていて、動向を数字で見る事の出来る売る側のスニーカー業界関係者には1年以上前から分かっていた事。
店頭やオンラインでの完売はもとよりサイズ欠けしないプロダクトが増えるのを目で確かめるしかないユーザーよりも早く、そして正確に…。

分かっていても歯止めが出来ない理由は…企画、生産、発注、発売等のプロセスに一定期間以上の時間を要する為。故に全てではないにしろ、打つ手打つ手が後手後手になる。

この様なブームという波の下降面に差しかかると囁かれる要因やジンクス。

その中に

『DUNKが売れなくなるとスニーカーが終わる』

というのがあります。

これだけ聞くとDUNKに問題があるのでは?という誤解を招き兼ねないですが、DUNKに罪はありません(笑)。

DUNKは利益率が高く、完売しなくても作り続け…市場に溢れるからブーム終焉のトリガーの様に見えるのです。もしかすると小売店に卸した時点で元は取れていて…直販の場合、プロパーで販売後、アウトレットやセールで75%OFFにしても原価を割る事はないののかと。なのでメーカーさんにとっては、とても優秀な商品だと思います。

もうひとつ、あまり広まってはいませんが…ブーム終焉前に起こる現象として

『カスタムが流行るとブームは終わる』

というのがあります。

何故なら90年代のG-SHOCKブームも2000年代のスニーカー人気の時もカスタムが流行ったのです。

ユーザーがカスタムに手を出すのは、既存(市販)の商品にある種のもの足りなさを感じ始めているからだと思います。これはかなりの高確率で終焉の兆しと言っていいかも知れません。

ブーム終焉とは次元が違いますが、iD(現By You)にラインナップされるとそのプロダクトは売れなくなるという都市伝説も…カスタムに似た理由からかも?ですね。

そして…

SNS時代のスニーカーブームの特徴のひとつに「ユーザー同士が煽り合う」というのがありますが…その延長線上に

『ブームが終わるとSNSにアウトレット情報が溢れかえる』

という説が新たに加わりました。

20年前の環境であれば、人気が失速し始めると1年も経たない内に終焉を迎えていたと思います。今はユーザー同士が良くも悪くも煽り合うSNS時代。その失速のスピードを若干緩やかにしている様に思います。ですが、それもそろそろ限界を迎えつつある様です。
今後もメーカーは市場を盛り上げ様にとカンフル剤的な企画を繰り出して来る事でしょう。それは瞬間的な効果を発揮するかも知れませんが…これまでの様な持続性をもたらす可能性は低いかと。

スニーカー市場が下火になったとしても、私がポケモンカードに手を出す事はないですし(笑)…ハイプ化してもしなくても過去30年以上続けて来た様に、性懲りもなくこれからもその時々に良いなと思ったスニーカーを可能な範囲で買い、履き続けると思います。

最後に…個人的にはメーカーにコントロールされたムーブメントではなく、ユーザーサイドからヒット商品を浮き彫りにさせる畝(うね)りが欲しいなと。その為にはリセール価格や第三者の評価に左右されない独自の感性を磨く努力が必要ですが…。

今はなき、あの面白かった時代(とき)の様に…。

Special Thanks : @km_033 

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