何を言っているのかわからない?
TEXT by Koji UEDA ( Alternate Sneakers )
邦画、洋画を含めて映画の配給会社に出入りさせてもらっていた時期があります。その頃は映画館への動員が厳しく、逆にレンタル店が全盛期でした。トレーラー等の資料を受取る際に宣伝担当の方が肩を落として吐露した言葉を今も鮮明に覚えています。
「映画館での上映はビデオ等のソフトメディアのPRみたいなもの」
と…。
現在はその頃に比べてシネコン等への動員は改善?されているはずですが…レンタル店がオンデマンドによるストリーミングに置き換わっただけ…の様にも思えます。
これに準えて語るのは少し無理がありますが…2次流通の為に1次流通が存在している様相を呈している現在のスニーカー市場も似たり寄ったりではないかと。
スニーカーの転売そのものに法規制はありません。
元を正せば使用目的で購入したが、結果として不要になった物を例えばフリーマーケット等で安く売り、それを必要とする人の手元に渡るリサイクル的な要素がありました。
一方で転売する事のみを目的に1次流通で購入し即時転売する。これはかつて横流しと言われ、どちらかというと蔑まれる行為に分類されていました。それが今や投資という名目でいつの間にか正当化され、疑問を抱く人が少なくなっています。
必要な物として買った物が不要になって転売するのとの、転売する事を目的に購入して横流しする…この2つの境が曖昧になっているのが今の時代なのではないかと思います。
先にも述べた通り、どちらも違法行為ではありません。モラルのあり方が変わっただけです。
ただ、日本固有の文化や美学が失われ、大陸的な色に染りつつあるのでは?と違和感を拭い切れません。
スニーカーが投資対象になったのは、需要と供給のバランスを意図的に崩したマーケティングが引き起こしたメーカーによる仕業と言っても過言ではありません。これもひとつの戦略としては正しいのですが、微妙なバランスを保ち続ける必要があります。そのマーケティングの成功に乗じて功を焦ったのかは別の話になるものの結果として多発を積み重ね、気がつけば市場体力を越え、売れる物と売れない物がはっきりし加速度的に売れない物が増加。過剰在庫に喘ぎ方向転換に迫られる。
では、直近のTravis WMNS AIR JORDAN 1 LOWの加熱ぶりはどうのなか?
市場が疲弊した今、最早以前の様に他の商品に飛び火する事は考えにくい。
繰り返します。転売する人に罪はないと私は思っています。モラルや価値観は時代と共に変遷するからです。ただ、これも繰り返しになりますが…日本古来のというか日本人の良さが少しずつ失われつつある様な気がして寂しくもあり、残念でしかありません。
そして、このままでは近い将来にメインユーザーとなるであろう人達のスニーカーへの入り口が「投資対象になるか否か」になるのであれば…この先、テクノロジー等は無価値化し、スポーツ用品メーカーとしての根幹が揺るがないとも限りません。
最後に付加的な余談になりますが…メーカー、リテーラー、ユーザーの三者間(細分化するとここにリセールプラットフォームと転売ヤーが加わります)のパワーバランスが崩れて久しく、私達は気付かないまま都合よく飼いならされている様な立場に陥ってしまっていると思う瞬間があります。
何にしても、えらい時代になったものです。
以上、最後まで読んだが何を言っているのかさっぱりわからないと思われた方がいれば…それは私の文章力の稚拙さによるものなので、どうかご容赦ください