コラボモデルの憂鬱

TEXT by Koji UEDA ( Alternate Sneakers )

■CLOT×FLAX DUNKの場合
3月中旬、香港のセレクトショップJUICEでウェブ抽選が実施され、3月18日に発売(当選発表)されたCLOT×FLAX DUNK。香港以外からの応募も可能でSNSを見る限り、足数が多かったのか?日本でもかなりの高確率で当選者が出ていました。

スニーカーの価値基準がリセール相場によって決定づけられる現代のスニーカーシーンにおいて、その評価は目に見える表面的なイメージに大きく左右されます。

今回のCLOT×FLAX DUNKもコラボレーションモデルといえど例外ではなく、リセールプラットフォームに寄せられたオファーとビッドによって可視化されたリセール相場がプロパー価格を下回りました。

一旦そうなると、何らかの要因が加わらないと再浮上することは稀で「プレ値が付かない=カッコ悪い」という思考の層からは蔑まれる存在になります。

リセール価格が高騰したコラボレーションモデルに対しては、スニーカー本体だけでなく箱や包み紙に至るまで特別感があると絶賛しますが、そうならなかったCLOT×FLAX DUNKには掌を返した様に派手だのダサいだのとこき下ろします(もちろん、リセール価格に関わらずそう感じる方もいらっしゃいます)。
そして万一、後にリセール価格が高騰した場合…最初からカッコ良いと思ってたんだ等と言い出すので、いろんな意味で凄いなぁと思うわけです^^;。

スニーカーの価値基準がリセール価格のみで判断するならば本明さんが言うNFTで充分ではないかと。もっと言えば、別にスニーカーじゃなくてもいいんじゃないの?

それはさて置き今回、atmos blue 表参道店にはお1人、atmos 心斎橋では並びが0人だったと伺っています。
これは憶測ですが、9時20分頃までに結果が出るSNKRSで購入出来たので行く予定だったatmosでの店頭抽選をとりやめた人が多かったのではないか?とも思います。

他にも外的要素としてUNION DUNKの発売やUNION AIR JORDAN 2の抽選、更にはA Ma Maniere×AIR JORDAN 2が近々に控えていること。加えてCLOT×AIR MAX 1の復刻がハイプ化しなかったイメージが残っていることなどが考えられます。

そして、UNION DUNK Argonを上回るであろう数をSNKRSに集中させたが為に発売開始から24時間経ってもほぼフルサイズが残っているという目に見える「余り物」の印象がダメ押しとなった感は否めません。

その結果、総じて「人気がない」というレッテルがCLOT×FLAX DUNKに貼られてしまったという残念な現実だけが残りました。

■UNION DUNK Argonの場合
2月下旬のコラムにて国内のとある正規スポーツ用品店さんから送られて来たナイキクオリティについての情報と画像をご紹介しました。
それに続いて、待望のUNION DUNKを入手されたユーザーの方がTwitterに投稿されていたナイキクオリティな画像をご覧いただければと思います。

「本気で欲しかったUNION DUNK。せっかく(SNKRSで)購入できたのに、いざ開封してみたらこんな質の悪さ。残念過ぎる。NIKEクオリティにも程がある。NIKE(カスタマー)に電話したら交換不可能だと」

という文面をTwitterで呟かれていたkane_sneakerさんにアップされていた画像の一部をお借りしました。
18,700円という決して安くはない金額を投じて届いたのがこれでは、やるせなくなるのも当然だとです。

楽しみにしていた届いた荷物を前に、品質は大丈夫だろうか?歪なものだったら嫌だなと冷や冷やしながら恐る恐る開封するコンシューマーの気持ちを考えていただいたことはあるのでしょうか?
ドキドキするのは抽選の時だけでいいんですよ、NIKEさん(苦笑)。

製造品質については30年前から言われていることで、一向に改善されないのは出来ないのではなくやる気がない?と捉えざるを得ません。本心はそうは思いなくないんですけどねぇ。

同じことを繰り返して申し上げますが、小売価格を上げずに企業努力でもって製造品質の向上と検品をしっかりとやってもらえないものかと思う次第。
コンシューマーに寄り添ったアプリの開発も良いですが、我々コンシューマーが寄り添って欲しいのはそこではなく安心して購入が出来るD2Cなのです。

【ナイキクオリティとは】
ナイキクオリティと製造品質などを揶揄した名称の語源は「ナイキの製造品質って良くないよね。クオリティが低くて困る」ということを繰り返し書いて来た中で、短縮して分かりやすく伝えるために出来上がったスニーカーヘッズ達の間でのみ通用する造語であり、スラングです。

コラボモデルの憂鬱というタイトルをつけましたが、今回の2例についてはお世辞も高いとは言えない製造技術と杜撰な検品プロセス、少しばかり小売を甘く見たマーケティングの失敗によるものなので、コラボレーション先であるブランドには全く罪がないことを念のために申し上げでおきます。

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