
three things
TEXT by Koji UEDA ( Alternate Sneakers )

■些細な事でも正確に
どうやらアメリカのYouTuberが最初で、その後…リークサイト等で広まったMAC ATTACKという俗称はナイキさんにとっては有り難くない事の様です。
ジョン・マッケンロー(John McEnroe)の名に通じるMACをナイキが使えなかった理由は少し考えれば推測できる事。

1980年代半ばに日本のテニスショップで発売されていたオリジナルの正式なモデル名は「THE MAC」。そして、今回の復刻されたモデルの正しい名称は「NIKE ATTACK QS SP」。
重箱の隅をつつく様なと思う人がいるかも知れませんが、ナイキさんの為だけでなく未来のスニーカーファンの為にも実在しないMAC ATTACKではなく、NIKE ATTACKと正確に伝え残したいものです。
◼円安とインフラの余波
1年以上続く円安状況にあって、昨年秋頃から各メーカーの商品価格が2割以上高くなると伝えられていた事が、ここに来て現実となっています。
特に7月以降に発売が予定されているナイキのラインナップを見て、ため息をつくユーザーも少なくありません。
価格上昇については個々の収入によって捉え方に差があります。また、世代によっても違って来るはずです。
例えば2001年9月に発売されたAIR JORDAN 3 RETRO “DARK MOCHA”(136064-121)の価格が13,650円(当時の消費税5%込)だった頃を実体験している人にとって、7月下旬に発売が予定されているAIR JORDAN 3 RETRO(CT8532-102)の29,150円はやはり高過ぎると感じてしまう事でしょう。
値上げは前々から分かっていた事で今更騒ぐ事でもないと思いつつも…新価格の数字を見ると「え⁈」と思わず声が出てしまいそうになります。

これから、価格高騰による買い控えが加速する可能性は否めません。例えば2万円以下のスニーカーなら3足買えても3万円のスニーカーには手を出し辛く、月に2足は買えない(買わない)というユーザー心理がはたらくとも限りません。
そうなると、我々ユーザーは買う事を諦めてしまえばそれで済みますが…売る側はそうは行きません。上代が上がるという事は下代も上がっているわけで…高くなった商品が売れずに残るというのは正に死活問題。
順応性が高いと言われる日本人が…いつしか上昇した価格に慣れて高いと感じなくなる日まで待っていられない。
ならば、昨今のリセール価格ありきの風潮とは無縁の価値基準をどう提案していくかが急務であり、それを何処まで浸透させられるかがこの先のスニーカー市場を大きく左右すると思われます。

◼直販と卸売の2本柱
D2Cへのシフトに伴い2018年からリテール提携を縮小して来たナイキが
「消費者直販(D2C)に亀裂が目立ち始める中、小売業者との関係を再構築している」
という見出しの海外のニュースを少し前に見ました。
また、ナイキの偉い方が
「D2Cモデルだけが全てではない」
と述べられたというのを聞き、どの口が言うと思わず突っ込みたくなりました(苦笑)。
更に2023年春。前出とは別のナイキの偉い方があるインタビューで
「直接ビジネスと卸売りビジネスの両方を私たちは選択してたのです」
と答えたそうです。
いやいやいや!それ2019年に日本でもD2Cへの強行なシフトチェンジをし出した際…両方出来る力があるのに卸売りビジネスを捨てるのは勿体ないと一介のユーザーでしかない私がSNSやここのコラムで発信していた事じゃないですか(笑)。
7月6日にオープンしたNIKE KYOTOもナイキとリテールパートナー契約をしたWINWIN YJVさんの運営なので、小売業者との関係再構築のひとつなのかも知れませんね。

総括すると、一見掌返しに映るその身のこなしは、状況の変化に応じ即時方向転換を行うという他社にはないナイキの強みのひとつなのだと思います。
同時にこれくらい面の皮が厚くないと(ここでは褒め言葉)ビジネスは成功しないのだなと。
過去のコラムでも似た事を書きましたが、敢えてもう一度。
各地に根差した小売店とそこで働く販売スタッフの日々の努力と販売力を侮ってもらっては困るのですよ。
