
NIKE DUNK LOW PRO B
以下は1月15日にスケートボードショップ、18日にSNKRSにて発売のNIKE SB DUNK LOW PRO Bのナイキオフィシャル説明文(原文)の一部です。
「2000年を迎える直前、Nikeはスケートボード向けに改良を加えたダンク プロ Bモデルを発表した。伸縮性のある内側のストラップと幅広のシューレースを配し、シュータンと履き口周りのパッドを増やすことで、ボード上とそれ以外の場所での快適性とコントロールを向上させた。プロ Bモデルの発売直後には、数十年間にわたって愛されている有名なダンク LOW プロが登場。これにより、プロ BはNike SBのオリジナルシューズの1つとなった。最新バージョンでは…(以下略)。
要するにNIKE SB DUNKシリーズのプロトタイプと称されるNIKE DUNK LOW PRO B(1999年12月発売)をNIKE SBのブランドに加え、新色を発売するという事です。

そこで記憶を辿りながら、当時の状況を振り返ってみたいと思います。
1999年8月、10月、11月、12月に展開された限定ラインである「City Attcck」と「Quick Strike」はフューチャーオーダーが出来るインラインには属さない限られた小売店のみで扱える商品のパッケージ名と捉えてください。そして「Quick Strike」は「City Attcck」よりも扱える店舗が多いパッケージという事になります。
そして、NIKE SBのプロトタイプとされる3足のNIKE DUNK LOW PRO Bは「Quick Strike」に分類された商品となります。故に店舗数はそれほど多くはありませんでしたが、東京や大阪という大都市圏以外のスニーカーショップでも販売されました。

因みにQuick Strikeを直訳すると「素早い攻撃」となり…企画から製造、販売までのプロセスがフューチャーオーダー商品(いわゆるインライン)よりも素早く行われるという意味から名付けられています。



下の画像は出荷の1ヶ月前である1999年11月に取扱店に配布されたカラーコピーによる案内(カタログ)です。ブルーのRAPIDをご覧ください。手描き文字で色の説明がされているだけでなく、出来上がり納品された商品のミッドソールがホワイトではなくブルーである事が明記されていません。それだけ企画デザインから出荷まで短期間に行われていた事が窺われます。

また、NIKE DUNKシリーズは1999年12月の出荷を最後に、約1年ほどナイキジャパンでの正規展開がなくなります。 2000年代前半から後半にかけて新たに店頭に並んでいたNIKE DUNKは並行輸入モデルで、ナイキジャパンが卸売りしたものではありません。 この時代、正規アカウントを持つ小売店も並行輸入品を扱えていたので…ユーザー視点ではナイキジャパン経由の商品と並行輸入品の区別がつきにくく、特にNIKE DUNKの場合は日本の正規価格(定価)がアメリカでの価格の約2倍という事もあり、並行輸入商品であっても国内定価とほぼ同額で販売されていたので判別はほぼ不可能でした。
従って、2000年半ばに国内流通し始めたNIKE DUNK LOW PRO Bは並行輸入商品であり、ナイキジャパン経由で流通するNIKE DUNK、NIKE DUNK PRO、NIKE DUNK PRO Bは2001年後半になってからだったと記憶しています。


■PROとB
「PRO」はNIKE SBが正式に立ち上がる前に通常のNIKE DUNKと差別化する為に付けられた称号の様なものと捉えていいと思います。
但しNIKE SBがスタートした後も数年に渡ってNIKE SBではないPROが付くNIKE DUNKがリリースされているので…差別化が完全に整うまで長い時間を要したのか?或いは組織が大きくなり統一性が難しくアバウトになってしまったせいではないかと。
アバウトという観点から言うと…オフィシャル説明にある「伸縮性のある内側のストラップ」「幅広のシューレース」「シュータンと履き口周りのパッドを増やす」というギミックを備えているからPROなのかというと必ずにもそうではありません。 分かりやすい例をあげると、皆さんもよくご存知であろうNIKE DUNK LOW SPの名で復刻されたVENEER、CERAMIC、PLUM、VIOTECの初登場時のモデル名は全てNIKE DUNK LOW PRO Bでしたが…シュータンは薄く、内側にストラップは付いておらず、シューレースは幅広でもオーバルタイプでもありません。 そして、これらのPRO及びPRO BのインソールにはNIKE SBの特徴であるズームエアが装備されていません。
「B」はスポーツブランドであるナイキが新たにライフスタイルをビジネスとして加える際に編成されたチームが「Branded Athletic」という名称で、そのチームが何らかの形で関与し担当したプロダクトに頭文字であるBを反映させたのだろうという説明を当時オフィシャルに準じるソースから伺いました。 故にNIKE DUNK以外にもAIR FORCE 1 B、AIR ZOOM HAVEN B、AIR ZOOM SEISMIC B、AIR TRAINER III B、LDV LEATHER B、AIR KUKINI B、AIR SUPER FLY B、AIR RIFT B、AIR TWENTYTWOSEVEN LOW B、LAVA DOME B、等…様々なプロダクトにBが付されています。
尚、Bが付くモデルが長く続かなかった理由は、スタッフやチーム名が頻繁に変更になる等、ライフスタイルという新たなビジネスモデルが確立するまでの過渡期であったから…というのが有力の様です。

■まとめ
モデル名にNIKE SB或いはSBが付かない1999年12月以降、2000年代初頭に登場したDUNK PROやDUNK PRO Bはスケートボードを想定したプロダクトであるものの、NIKE SBシリーズには属さないものであると認識しておいた方がいいと思います。 何故なら、最初のボタンを掛け違えるのと一緒で認識のちょっとした齟齬が後々になって辻褄が合わず整合性の取れない事態になるからです。そうなるとNIKE SBの歴史とカルチャーが有耶無耶になり、いずれ崩れ出すきっかけにならないとも限りません。
何より今回登場のNIKE SB DUNK LOW PRO Bは…初めてBを冠したNIKE SBと捉えた方がスッキリします。 因みに過去の経緯から鑑みると…このパラシュートベージュの他にもマテリアルやカラーが違うNIKE SB DUNK LOW PRO Bが、今後も発売されるのでは?と思っています。

