atmos SHINSAIBASHI スコッチとカシスオレンジ

今思えば、僕は彼女の飲むスコッチの香りが苦手だった。あの朝とも夜とも、笑っているのか泣いているのか、わからないあの香りが。僕はお酒を知ったばかりで、いつもカシスオレンジを飲んで彼女の隣に座っていた。

スモーキーフレーバーなウイスキーと甘い香りのするタバコ、やさしく諭すように、「今日は何してたの?」と尋ねる横顔。タバコをとる彼女の指の動きを見ながら、僕は、講義で習った音楽とファッションの関連性のことや、学校の図書館と家の近くにある赤レンガの図書館の違いを話したりした。彼女は面白そうにも、退屈そうにも見えない顔でその話を聞いていたし、彼女が笑うのは目があったときに優しく微笑むだけだった。

僕が彼女と出会ったのは、コンクールの日だった。入賞すらできなかった僕は自分の才能のなさを呪い、自分の若さだけを信じて朝日から逃げるように夜の街をぶらついた。どこまで歩いたろう、寂れた看板を見つけてバーだと気づいた、少し重たいドアを開けると、古いブルースと優しい色の照明だけの小さな店だった。奥のカウンターに女性が一人。僕はここで自分が臆病じゃなくなっていることに気づいた。

「どうぞ」バーテンダーは手で着席を促した。「きついウイスキーを下さい」バーテンダーの後ろには瓶詰めされた琥珀色の液体が並んでいる。ウイスキーだ。飲み方は?ロックで。それ以外は知らなかった。

結論からいうと、僕はそのウイスキーを飲めなかった。独特の香りと焼けるように熱いアルコールに慣れてなかったのだ。「そのスコッチ、あなたにそっくりよ」少しハスキーな声で彼女は言った。「でもまだ知らなくていい」彼女は続けて言うと、すべてを知った巫女の様に、僕に優しく微笑んだ。熱くなるのを感じたが、アルコールの所為じゃないのは確かだった。

僕があの日飲んだのは、タリスカー。君の好きなスカイ島のウイスキー。

NIKE WMNS AIR FORCE 1 ’07

違う素材を組み合わせたディティールと爽やかでも癖のある配色が僕の目を引いた。あの日から僕はカシスオレンジ。

バーの格子ガラスから、オレンジの朝日が差し込んでいる。僕はいつか、深い深いウイスキーを知るだろう。そう悟った時、彼女はいつもと違う表情を見せた、スパイスの効いた洋菓子のように、矛盾した味と表情を。

バーを出ると、全てを洗うように太陽が出ていた。僕たちは静かに眠れる場所を探す、新しい香りを知る予感があった。

atmos SHINSAIBASHI
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TEL:06-6484-6475

感染症予防に伴う営業時間短縮の為

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