atmos SHINSAIBASHI ムルソー君、時うどんでおまっ

『フゥッ、フッ、フゥ~、ずっ、ずずぅ~~~』
ちっちゃいうどんみたいなイヤホンを通して、耳ん中で枝雀はんがうどんをすする音が響いている。いやこれ本当に、枝雀はんの時うどんは何回聞いても面白い。ソーファニー。これが満員のエレベーターの中じゃなかったら「こほほ、ほほほん」とかヘラヘラ笑ってしまうところであっただろう。しかし私の役職がそんな奇怪な笑い方をさせることを許さない。私は多くのファンシーキャラクターグッズを開発している会社に努めており、商品開発部に所属する平社員ながらも言わばこの会社の心臓部で働く誇り高き会社員であった。
『うどんちゅうのんは粉が少々悪ぅても、ダシが肝心や。ほんまもんのダシつこてるやないか、ありがたいやないか』そうそう、そーゆうこと。言いたいことはそーゆうこと。枝雀はん、ありがとさん。

餌を待つ鯉。あるいは有象無象で満員のエレベーターでは、わが社に勤めるOLたちがこぞってランチを何を食べるかペチャクチャ思案していた。「なんか、あの、そば粉をクレープにしてぇ、そんで四角に折ったぁ、目玉焼きのってるやつぅ?食べたいよね~」「あ、わかる、わかるぅ~」とかなんとか、そこまで知ってるなら名前も知ってるだろ。大体なんでそば粉でクレープを作って、わざわざ四角にまた折り曲げているんだ。と思いつつ、そのOLを横目でちらっと見たら、紅の色が鉛色だった。ギョッ、もしくは驚、っとした態度をとってしまって、鉛OLに奇怪な目で見られる始末。何ですか……?鉛OLはん、何ですか…?それが、わが社の未来を担う社員に向ける視線ですかい?

私はエレベーターを降りると一目散に社を出て、近くのうどんチェーン店に向かった。正直、全然うどんの気持ちではなかったのだが、時うどんを聞いていると口の中で涎が溜まり、たまらなくなった。時うどん同じく『ずゥ~~~~』っとダシを啜りたい気持ちに駆られていた。そしてワイフに昼は500円で済ませろと、きつく言われている為、うどんなら財布にも良心的、さすがに16文ほどではないが、腹持ちも良く、薬味かけ放題で童心に帰ったような心持ちさえする。せや言うても薬味をドバドバかけるのはナンセンス。決まりよくビジュアル面にも気を遣わねば、唇の色が鉛色になりかねない。にしても暑っ、ここ最近は猛暑。『太陽がまぶしかったから』よろしく、うどんを食べる理由がそれでもええな思いながら、立ったも座っても寝転んでも、つまり500円を握りしめ天ぷら臭い店内へと私は歩を進めた。

『芋を食べるさかい屁ぇがでんねやなしに、屁が出るさかい、芋食べんねんねぇ』ほほほほん、そーそーそう、そーゆうこと、枝雀はん以下割愛。うどんを食べるから太陽がまぶしいのではなく、太陽がまぶしいからうどん食べんねんねぇ。鉛色の理由もそれなら納得。

https://www.atmos-tokyo.com/items/ct1091-400

「あ、涼だねっ」なんて言葉があったとしたら、今の私はまさしく「あ、涼だねっ」の状態である。気づけば私は冷やしぶっかけうどんを注文したからだ。時うどんのような『さっぶぅ~~い晩』ならば、かけうどんをシュシュシューっと留学生アルバイトに作ってもらうところだが、今の季節は異邦人よろしく、猛暑続く夏真っ盛り。ムルソー君の言葉を借りるなら『それは太陽のせい』いう事で冷たいうどんを頼んだ次第であった。

そしてこれも、「あ、涼だねっ」な一足。今では結構見慣れてきた人もいるかしれないけれど、やはりAIRMAX2090は一際目を惹く一足な事には変わりない。なじみ深いAIRMAX90の伝統的なスタイルを、大胆にも革新的にデザインした一足であり、過去を未来へと繋ぐ噺家の様なシューズだ。最新のAIRクッショニングが更なる快適性を発揮し、透明なメッシュ素材と鮮やかな配色は「あ、涼だねっ」の一言に尽きる。機能性にもデザイン性にも優れているこのシューズは、「緊張の緩和」を体現した枝雀はんみたいなもんやと私は思う。かは微妙。

で、肝心のうどん。『こしつる』でも『うどんのお粥さん』のどちらでもなく、一度茹でてしめたうどんを、冷やしにせなあかんもんやから言うて、もう一回冷水でしめてるからか、えらく硬かった。あごもだんだん疲れてきたし、ぬらぬらと口の中でうどんは踊り狂っていた。「ぬらこし」である。ここで残したら「うどんが硬かったから」が理由になるのか「太陽がまぶしかったから」が理由になるのか私にはまだわからない。私にわかっている事はムルソー君はいささか正直に答えすぎたために死刑なったという事だけ。罪を軽くするためにも「息と間ぁ」の供述は必要だろう。


「それは太陽のせいですねん。ちょ、聞いてね、ビーチ言うてもね、熱いでっしゃろ、ほんで僕ね、涼しいとこないかいな~思ってツレんとこ行こ思いましてん。体がね、熱持ってるから、涼しい所行て冷えた飲みもん飲んでやで『あ、涼だねっ』とかなんとかそんなとこ言い合って、あはは~言うて笑おうかいなぁ思てましてん。そしたらでっせ、アラブの人がいてましたんやがな~。最初は僕もね、『前、失礼します』いう具合で、行こ思いましたら、急に怒鳴ってきはって、言葉も何言うてるかわからへんしで、まあ文字書いてもろてもわからしまへんねんけどやで、まあなんか怒ってはる事はわかりましてん。そんで押し倒されて、なに言いますのん?あれ?なんかアリババが持ってるナイフみたいなんが出て来てやで、そらこっちも必死ですがな~、自分の身ィ守らなあきませんからな~、そしたらいつの間にか弾いとったんですわ~、もおホンマに故意やありまへんねん。ママンが亡くなった次の日に、楽しい事したんも認めますわ、そらね、した事やさかいどうにもならん。でもやで『据え膳食わぬは男の恥』言いまっしゃろ。私もね、どうしたもんかな~思いながら、ガレットやなんやら食べてましたんやけど、辛かったんやろね、僕、誰かの胸借りたかったんやろね、僕、それでまあ辛かったから癒してもろただけの事ですねん。どうか堪忍しとくれやす」くらいの事言ってれば、死刑にはならなかっただろうに。

ふつふつと考えていたら、うどんを食い終えたので早々に鉢を下げた。ここはオチとして、うどん屋に時を訪ねたいところだが「おかわり付けまひょか?」を聞いてないので、私は納涼な腹をさすりながら社に戻った。

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