atmos SHINSAIBASHI A bad mood of sneaker

私は実に空虚な日々を過ごしていていたが、その虚しさはどことなく救われない感じがして、素晴らしく心地が良かった。

対テロ特殊対策部隊( Anti Terrorist Special Operation Forces, ATSOF) に所属する私は「任務中の心理的外傷」により2か月間の休養を与えられ、海沿いのリゾート地で無為な日々を過ごしていた。 

 季節は夏で、サングラスを突き抜けてくるような日差しと、空中を自由に滑空する気のいいカモメと、有閑階級の為の波の音がしていた。リゾート地では波の音すら文明にスポイルされているのだ。こんなにも洗練され、瀟洒で、上品な波の音は今までに聞いたことがない。私は海沿いの遊歩道を歩き、陽の光できらきら輝くエメラルド色の海を眺めながら、そんなことを考えていた。 時刻は昼過ぎで、一日の中でも特にゴージャスな時間帯であった。 

 朝一にサーフィンをして、海沿いのカフェ・テラスで朝食兼昼食を済ませホテルへと帰る道すがら、私はほとんど治って目立たなくなってきた自分の腕の無数の擦り傷を撫でた。その様子を横で見ていたローラが、

「ねえ、あなたって本当はとても綺麗な腕をしているのね。最初はその傷跡が痛々しくてちょっと見てられなかったけど。ねえ、そのこと知ってた?」

と言った。

私は「知らなかったな」と答えて、横にいる彼女を見ながら、ずいぶん遠いところまで来てしまったのだと実感した。

 あの事件からもうすぐ1か月が経つ。私は爆破テロを止めるという任務をおびて、とある紛争国へ潜入した。任務は非常にスムーズに進行し、結果として爆破犯以外のテロリストグループを逮捕するに至った。 しかし、爆破犯の少年が予想された地点とは全く違う場所で自爆するという事件が起こり、少年を追跡していた私もその巻き添えを食らって軽症を負ってしまったのだ。 

その後私は、最も高潔な救うべき命を救えなかった自分に猛烈に失望してしまった。もちろんあの少年のことだ。自爆テロを起こすには優しすぎた少年が、誰も傷つけずに済んだ安堵感と爆発に包まれながら微笑んでいたのを私は見た。

大きな失意の中を病院で過ごすうちに、PTSDであると診断され、上官より2か月の休暇を告げられた。 そして私は医者の進めるがままに海沿いのリゾート地へ1人逃げるようにやってきたわけだ。 

最初の数日は何をする気にもなれずホテルの部屋でルームサーヴィスを頼みながらぼんやりとして過ごした。カーテンを閉めた薄暗い部屋の中でベッドに横たわりながら、二度と任務には戻れないかもしれないと思った。そしてその絶望感が私に更なる無力感をもたらした。それはまるで、ロケット鉛筆のような無力感であった。私の中で、巨大な無力感が次の無力感を後押ししていた。

 そんな状態で三日間過ごした後、夜中にホテルと隣接する海岸へふらりと散歩に出てみた。真っ暗闇の中で、見えない波の音を一人で聞きながら、私は二度と任務に戻れなくなってもしょうがないと思えた。 私を取り巻く世界が、明らかに狂っていたからだ。真面目に生きるにはクレイジーな奴が多すぎるし、狂人として生きるにはいささか人生は長い。  私にはどちらに賭けても分が悪いように思えた。 

 ため息をついて真っ暗な海を眺めていると、私から30メートルほど離れたところにある針葉樹の雑木林から何やら物音が聞こえた。 

「…静…しやがれ…」 

決して大きな声ではないが、強い口調の男の声だ。 それにつづいて聞き覚えのあるドッという音と短い女の悲鳴が聞こえた。 私は海の方を見ながらもう一度だけため息をついて、立ち上がった。 

 私には、それが何の物音なのか、暗闇の中でもすぐにわかった。 人が人を殴る音だ。そのまま無視してしまってもかまわないが、そうするには今日の私は神経が弱り過ぎている。 私は仲裁に入るため、足早に声のした方へ向かった。

 私が雑木林に足を踏み入れた時、暗闇の中で揉み合っている男女が目に入った。そして揉み合う男女の常として、やはり男が優勢であった。私は態勢を低くして彼らに近づいていった。ちょうど上手い具合に砂浜が私の足音を隠してくれた。いや、履いていたスニーカーのおかげかもしれない。きっとその両方だろう― 私は素早く男の背後に滑り込み、2発目のパンチを繰り出すために振り上げた腕をつかんだ。 

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ちなみに私が履いていたシューズはこれだ。

[On ‘Cloud boom’ ]

On史上最速のレーシングシューズとして発売されたCloud boom。

フルマラソンにも対応する機能的なシューズだが、もちろん普段履きでもその心地よさは健在だ。 アッパーのメッシュ素材が日常生活でもその快適さをキープする。かなり粗目の通気性の高いメッシュなので、夏場の足元には最適だ。 

アウトソールにはグリップ力の高いパターンを採用しているのでアスファルトでも抜群のトラクションを発揮。 

そして何よりもOn独自のクッションシステム 「Twin CloudTec® 」が抜群のクッション性を発揮する。

革靴と違い足音が立たない sneak=忍び寄る というのがSneakerの語源だが、私はsneakできるものしかスニーカーとは呼ばない。そして’スニーカー’を履いている私がスニーカー( こそこそ野郎)となるのだ。 とにかく、過度な装飾で機能的でないデザインのシューズを、私はスニーカーとは呼ばないのだ。

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私はつかんだ男の腕をそのまま後ろへ捩じり上げた。 

「なんだてめえ…!」 

男が態勢を崩し、痛みに顔をしかめながら叫ぶ。 

私は一言こう答えた。

「不機嫌なスニーカーだ」

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