2018/10/17 ATMOS NAMBA

俺は最悪の気分で目を覚ました。

 

頭の中でベンガルトラが暴れてやがる。頭の中のベンガルが俺の大脳に噛みついてぐわんぐわんに揺らしてやがる。

 

俺はベッドに横たわり薄汚れた天井を見つめながら、そいつが大脳を食らいつくして満足するのをじっと待った。

 

15分程して奴が満足して居眠りを始めたころ、俺はそいつを起こさないようにそっと起き上がり、脱ぎ散らかした服をまたいでシンクの水をコップについでそのまま一杯飲んだ。 昨晩飲みすぎたビールの匂いがぶり返したが、そいつをカルキ臭い水と飲みこむ。

 

またやっちまった、くそだ。くそったれだ。 後悔しかかって辞めた。 後悔ってのは次に生かせる奴だけがするもんだ。こんなもんはただの事実確認だ。 息を吸って吐くのと同じだ。「はいじゃあ大きく息をすってくださーい、はい吐いてー、」 くそったれだ。

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よろけるようにして部屋を出ると、心地よい風がシャツ越しに吹き抜けていった。やっと10月らしくなってきた。 今年の夏はひどかった。日本全土に落し蓋でもかかっているのかと思った。グツグツ音を立てて煮込まれる日本列島…

俺は夏が苦手だ。ベタベタするもんは苦手だ。冬が好きってわけじゃないが、寒さはまとわりつかない。

 

 

秋の匂いをはらんだ風を受けて幾らから気分が良くなってきた俺は、散歩がてら街に向かってみる。

 

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きちんと熱くて苦いホットコーヒーを出してくれる喫茶店で新聞を読むふりをしながら、昨晩やっちまった事とあいつに対してやれなかった事について考えた。

夜が明ける前にあいつは行っちまったんだった。 俺は何をしちまったんだ? 思い出せない。ベンガルの野郎が俺の邪魔をする。奴が俺の記憶の引き出しの前でぐうぐう寝てやがるのだ。

 

俺は考えるのを止めて、残りのコーヒーを流し込み、店を後にした。

 

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夜まではまだ時間がある。

 

やることもなく街を流していると、一軒のスニーカーショップが目に留まった。清潔感のある白い店内に整然と並べられたスニーカーに気を良くして店内に入ってみる。

 

俺はもともとキレイ好きなのだ。 小さい頃からマミーにも「片付けしなさい」なんて言われたことはなかったし、遊びに行った級友の部屋が雑然と散らかってるのにも我慢ならなかった。

 

それが今はどうだ? あの掃きだめみたいな部屋で寝起きする生活。 俺はどこで間違えちまったんだ?

 

ふわつく思考を垂れ流しにしながら、ぼんやりと数あるスニーカーを眺めていると、一つのスニーカーが目に留まった。

 

 

普段ならスルーするところだったかもしれない。俺の中のベンガルがこのカモ柄に呼応したのか?

 

ちなみに俺の靴箱事情について話すなら、俺はすでにシックなブラックのシューズもきれいなホワイトのスニーカーも持っている。グラフティをやっていた頃は周りの影響もあり派手な色のものも履いてはしゃいだが、やつらとも疎遠になり、なんとなく最近は履かなくなった。

 

大人になり、シックになり、キレイ好きでなくなり、仲間がいなくなる。 なにかが決定的に間違っている気がして、俺は酒が飲みたくなる。

 

グッとこらえて、じっくりシューズを見ていくと差し色にうっすらとピンクなんかも入っていて気が利いている。

 

昔なら地味で物足らないところかもしれないが、今の俺にはちょうどいい遊び具合だ。

手に取って眺めているうちにスタッフに声をかけらて、流れで試着してみることにする。

 

履いてみてすぐに俺にはわかった。 こいつはひどく履きやすいシューズだ。 長時間履いていても疲れることはなさそうだし、何より意外と俺の服装にもマッチした。

一見、プレーンなグレーのスニーカーだが、良くみると随所に遊びが効いている。 柄物なんていつぶりだ? 俺はそこで既に買う気になっていることに気づく。

 

深い考えもなくそのまま履き替え、レジに向かった。金を払っている途中で、レジ向かいにシューズと同じカモ柄の人形が置いてあることに気づく。

 

そういえばあいつの部屋に同じ人形が置いてあったのを思い出す。BE@BRICKという名前らしい。

俺が何をしちまったのかは依然として不明だが、こいつを手土産に話をしにいってみるのも悪くないかもしれない。

 

なんでもこのショップ「atmos」とドイツのスニーカーセレクトショップ「Sole Box」とのコラボモデルとのことで、シューズと同じく、この系列店舗限定での販売だそうだ。 限定物に弱いあいつもきっと気を良くしてくれるに違いない。

 

俺はそのBE@BRICKもテイクし、紙袋を抱えながら外に出て、また行き場を失う。

 

しかし別に不快ではない。

新しいスニーカーに気分もさっぱりしていい気持ちだ。 ベンガル野郎もこのカモ柄が気に入ったらしくご機嫌の様子だ。

スニーカーの履き心地を試しながら、夜の近づいてきた街に体を馴染ませていく。

 

 

 

 

俺はその足でうまいドイツビールを飲ませてくれる店に向かった。

 

 

 

 

 

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