
AIR JORDANはマイケルジョーダンの夢を見るか?
「何かを欲しいと思った時点で、それは貴方に足りてないものだ」
という「饗宴」でのプラトンの言葉を思い返すに、僕はいつも都会の雑踏で六月の雨に打たれているような気持になる。
AIR JORDANが、神と呼ばれた世界最高のバスケットボールプレイヤーのアイコンであるとは、一概に断言できない時代になりつつあるようだ。
勿論あるものは「AIR JORDAN」にMJの面影を見出し、あの身体能力と、勝負強さと、そしてそのバスケットボールの概念すら変えた華々しさに対するリスペクトをシューズで表現する。 世界中のキッズが「彼のようになれたら」とAJを履いた時代があった。
またある者は、そこにMJではないスターの面影を見出し、希少性や ’映え’ 俗にいうHYPEを表現する。これは決して、上下でも善悪の話でもない。 昨日は台風の影響で波が高かったとか、今年は実に美味い茄が獲れたとか、そういった話と同じだ。 有史以来行われてきた情報の伝達。 光の速度で飛べない言葉達。
しかしそれでも、ふと思うのだ。
AIR JORDANという重力は、MICHAEL JORDANをも飲み込んでしまったのかもしれない。
その様はまるで銀河の遠くで増殖を続けるブラックホールのようで、その強力な重力で光すらも吸い込み続けるのかもしれない。然るに、やはりこれも善悪の話ではない。 ただ僕としては、その過程はジョーダンが放ったボールが、リングにも触れずネットに吸いこまれていくかのように流麗であれと願うばかりだ。

[AIR JORDAN XXXIV LOW SE]
このモデルがこれまでのAJシリーズの中で最軽量であるとか、如何に機能的かはここでは言わない。
それでも、次世代を担うスーパースターの足元を支えるはずの今モデルから色濃く立ち上る「MJ」独特の芳香はなんなのだろう。 もし、MJがまだ現役であるのならば、間違いなく履いていただろうといわせる雰囲気がこのモデルにはある。
なんでもこのモデル、「デザイン性は最小限に留め、プレイヤーに本当に必要なスペックを残した」とされている。

然るに、このミッドソールに空いた穴も只のデザインではない。最新のクッショニングシステムと軽量化の産物。
それでもこのホールを美しいと感じるのは何故なのだろうか?
思えばMJのプレーもそうだった。 あのクロスオーバーもダブルクラッチもフェイダウェイも全て、台本通りのショーマンシップではなくて、相手をかわしシュートを決める為の「必然の産物」であった。そしてそんな彼のプレーに僕らは驚愕し感嘆し、そしてその美しさに魅せられた。
あのMJのプレーのような豪胆な華麗さが、このシューズには息づいている。 僕にはそう見える。
貴方がなぜこのシューズを手に取るのか? 今、その理由は無数にある。
しかし
「欲しいと思った時点で、それは貴方に足りてないものだ」
という言葉を思い返し、誰もMJにはなれないのだと実感する度に、やはり僕は 都会の雑踏で六月の雨に打たれているような気持になるのだ。
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